2022年9月11日に栃木県の日光市足尾にある山々(中倉山、沢入山、オロ山、庚申山、駒掛山、渓雲山、薬師岳、鋸山、皇海山、女山)を日帰りで縦走してきました。
※山頂に立ったあと下山せずそのまま次の山へ向かうことを縦走(じゅうそう)といいます。
皇海山(すかいさん)は日本百名山のひとつで栃木県と群馬県の境にある標高2,144mの山です。

”スカイサン”という響きを聞くとMt.Sky = 空山 を空想させます。なんとかっこよい名前でしょう!
…名前の由来は山容が笄(こうがい)に似ており、笄山(こうがいさん)と呼ばれていたものが皇開山と宛て字されて、それが皇海山となり、”すかいさん”と誤読されたという説が有名です。
※笄(こうがい)とは、髪を掻き揚げて髷(まげ)を形つくる装飾的な結髪用具のことです。
皇海山東側には足尾町があります。足尾には観光施設があり歴史ある足尾銅山にてついて学ぶことができます。また日本のグランドキャニオンと称される松木渓谷という雄大な渓谷があります。松木渓谷は銅親水公園からアクセスが可能で、付近の中倉山からは絶景を望むことができます。

目次
- 概要
- 舟石峠(備前立山入り口 駐車場) 0:00
- 中倉山 3:30
- 沢入山 4:30
- オロ山 6:15
- 庚申山 7:30
- 鋸山 10:00
- 皇海山 11:30
- 女山(六林班峠) 14:10
- 庚申山荘 17:10
- 銀山平 18:50
- 舟石峠(備前立山入り口 駐車場) 19:30
- 参考
概要
昨年から1年に1回、日帰りで長距離の縦走を行うことを決めました。挑む山を設定することで日々のトレーニングのモチベーション維持し達成感を味わうのが目的です。去年は日光連山を縦走しました。今年は皇海山に登ろうと決めていました。皇海山は15年ほど前に、山の師匠と一緒にクラシックルートと呼ばれる伝統的なルート(銀山平から庚申山を目指し鋸十一峰を経て皇海山に至り、六林班峠を経由して銀山平へ下る)を歩き、AM5:00から22:00までおよそ17時間を要しました。非常に苦労したがゆえに記憶に残っていて忘れられない思い出の山で、いつか再挑戦をしようと考えていました。
※皇海山の登山口は群馬県側の皇海橋からのルートが最短でしたが林道の崩落に伴い廃道となり通行禁止(2022年9月11日時点の情報)となっています。
9月9日(金)に縦走を予定していましたが、台風が接近している影響で天気が崩れたため、やむなく中止としました。今年は断念しようと思っていたところ9月11日は晴れ予報となったため登山日を変更し登ることができました。(9月11日は41歳の誕生日でした。)
今回はクラシックルートではなく中倉山を通過して皇海山に行くルートに挑戦することとしました。YAMAPという登山アプリで登られている方がおり、参考とさせていただきました。”中倉山”と”クラシックルート”をかけて”中倉シックルート”と呼ばれていました。絶妙なネーミングセンスです!
事前に行きの銅親水公園から中倉山のルートと、帰りの銀山平から庚申山までの2つのルートを偵察しておきました。登山計画では、どちらもヘッドライトが必要な時間となるためためです。
起点は備前立山の登山口のある舟石峠の駐車場としました。こちらから歩くことで比較的安全に歩行しやすい林道歩きと通過したことのある中倉山を暗い時間帯に登り、登ったことのない沢入山から庚申山までは明るくなってから歩くことができます。また下山時に時間と体力に余裕があれば、備前立山も登ってしまうことを企てていました…。
所要時間は約19時間、約36km、上昇高度約3,000mの道程となりました。(予定より早いペースで登れれば、スタート地点の備前立山に登頂し夕日と皇海山を望むのを目標としましたが、舟石峠の駐車場に到着したときは時間も体力もなく断念としました。)
※所要時間はYAMAPアプリの計測情報を参考に記載しました。今回の登山ではスマホのアプリのYAMAPとGarminのForeAthlete 35Jというジョギング向けのGPS watchを使用して計測しました。GarminのデータはStravaというアプリとデータを同期させています。
下の左上図がYAMAPのデータで距離36.2km、上昇高度3,008mとなっています。Garminのデータでは距離43.6km、上昇高度4,168mとなっておりアプリの表現方法で各値に差が生じています。
[データロガーの実績]



YAMAPアプリでは有料のプレミアム会員になると下のような動画を出力することができたり、家族や知人に登山中の現在地を知らせる「みまもり機能」をLINEで使うなどの様々な機能が使用できます。通常は無料会員の機能で十分ですが、今回のような長距離登山を行うときは、1か月限定でプレミアム会員になり、合わせてYAMAPアプリより登山保険にも加入を行うようにしています。
[標準タイム -YAMAPより] 皇海山縦走のモデルコースと標準的な所要時間(コースタイム倍率x1.0)は約19時間30分になります。※ここに休憩時間が加わります。また縦走装備であれば荷物が重たくなるのでコースタイム倍率はx1.2くらいが目安になります。ボリュームを考えると通常は一泊二日の行程が推奨となります。

舟石峠(備前立山入り口 駐車場)
駐車場は無料の舟石峠駐車場を利用しました。こちらは約50台の駐車スペース(砂利)があり、天気が良ければ男体山を望むことができます。駐車場は特に混むような場所ではなさそうです。銅親水公園方面よりアクセスしましたが、道がやや狭くやや荒れた印象の舗装路でした。(車の小傷などを気にされる方は、銀山平側からのアクセスをおすすめします。)※帰りはイノシシ兄弟に遭遇しました。
前日に駐車場に到着しました。しばらく仮眠をとり夜中の0時00分頃に駐車場を出発としました。月が明るく、木で陰っていない道はヘッドランプを消しても月光をたよりに歩けるほどでした。月って明るいんですね。(後で調べると前日の9月10日が満月でした。)
舟石峠の標高は約1,000mです。こちらから東にある足尾の製錬所跡(標高約700m)に向かい、そこから北にある銅親水公園を経由して中倉山登山口(標高約900m)へ向かいます。舟石峠から中倉山登山口までは約6kmの林道&舗装路歩きとなります。
舟石峠は関東ふれあいの道となっており、途中にたくさんの看板が立てられており歴史を感じることができます。明るい日中にゆっくりと散策してみるのも楽しそうです。
※ここで注意事項です。私はDocomoのスマートフォンを使用していますが、舟石峠駐車場では電波が繋がりませんでした。YAMAPアプリは電波が通じなくてもGPS信号を受信し現在位置を知ることができますが、電波が通じていないと登山届を申請することができません。登山届は電波が繋がる箇所であらかじめ事前に届け出を済ませておくことをお勧めします。皇海山周辺は基本的に電波が繋がりませんでした。スタート付近の銅親水公園付近を超えて中倉山を過ぎると、皇海山と鋸山の間にある不動沢のコルのあたりでかろうじて電波が繋がるくらいで、その後も銀山平付近まで電波は通じませんでした。











銅親水公園から中倉山登山口までは林道が続きます。日中であれば壮大な松木渓谷を望むことができます。足尾の山は植林が盛んに行われていました。また足尾の山域は、鹿がたくさんいるようです。川をライトで照らすと光る眼がたくさんあり、登山中に鹿の鳴き声が頻繁に聞こえました。暗闇で急に草むらがガサッと動いたり鳴き声が聞こえると心臓がドキドキしてしまいます。。。
中倉山登山口前には立派な仮設トイレが設置されています。登山口前のトイレはとても有難いですね!


参考:以前、明るいときに撮影した画像です。




(舟石峠駐車場0:00>>中倉山登山口2:00)
中倉山(なかくらやま)標高1,499m
標高約900mの中倉山登山口からは、約600mの良い登りが待っています。標高1,499mの中倉山まで一気に登ります。稜線にあがる途中にとても景色の良い場所がありますが、今回は暗い時間を通過するため別の最短ルートを進みます。稜線にでると月明かりでヘッドランプが不要になりました。稜線は気持ちの良い笹道です。この道、景色が壮大でとても好きです。
写真を撮影することはできませんでしたが、国際宇宙ステーション”きぼう”が見える予報となっており、”きぼう”を観測することができました。

中倉山(標高1,499m)の山頂に到着しました。「中倉山」の標識が壊れてしまっているようです。

暗いですが、中倉山のシンボルの「孤高のブナ」も撮影することができました。

参考:以前、北側に位置する黒檜山と社山の稜線から撮影した中倉山です。写真ではわかりづらいですが、孤高のブナらしき木が見えました!

(中倉山登山口2:00>>中倉山3:30)
沢入山(そうりやま)標高1,704m
中倉山から沢入山へ向かいます。実は、沢入山の直前にとてもおもしろい名前のピークがあります。その名も”なみへいピーク”です!せっかくなので”なみへいピーク”の毛?の先に月が位置するように写真を撮ってみました。(たいまつ、みたいです。)

標高1,704mの沢入山に到着です。日が昇りはじめ、あたりが徐々に明るくなってきました。

沢入山には、とてもかわいい素敵な標識がありました。癒されます。

(中倉山3:30>>沢入山4:30)
オロ山(おろやま)標高1,821m
中倉山、なみへいピーク、沢入山に続きオロ山を目指します。山と高原地図には沢入山までのルートしか記載がありませんが、YAMAPアプリではオロ山までのルートが実線で描かれています。
いつの間にか日が昇ってきました。この瞬間がとても好きです。太陽が昇ると一気に明るく、暖かくなります。これから始まる一日の活力のもと、太陽の有難さに感動してしまいます。

日の光が皇海山を照らしています。月と一緒に皇海山のモルゲンロートを眺めることができました。
モルゲンロート:朝日の出る前に山がバラ色に美しく染まることを言います。ドイツ語で”モルゲン=朝”、”ロート=赤い”の意味があります。

少し先の稜線からは富士山も見えました。本日は良い天気が続きそうです。

標高1,821mのオロ山に到着しました。皇海山に徐々に近づいていますが、まだ遠いです。

(沢入山4:30>>オロ山6:15)
庚申山(こうしんさん)標高1,892m
さらにオロ山から庚申山を目指します。YAMAPアプリではオロ山から庚申山の間は破線のルートとなっており、人があまり入っていない雰囲気が漂っています。ここから笹の量が一気に増えます。カッパとスパッツを履くのが手間だと思い装着しないで侵入してしまいましたが、すぐに着るべきでした。。。朝露に濡れた笹をかき分けていくと、すぐに服がびしょ濡れになりました。また、笹の下には倒木が隠れており、数回倒木に足をぶつけて痛い思いをしました。笹、恐るべし。

皇海山と鋸山が良く見えました。これから登るワクワク感がたまりません。

こちらは左側が庚申山です。下写真では全て写っていませんが、庚申山から右側の鋸山まで、鋸十一峰と呼ばれるピークを縦走します。

標高1,892mの庚申山に到着です。庚申山は展望がよくありませんが、すぐ先に良展望箇所があります。

(オロ山6:15>>庚申山7:30)
鋸山(のこぎりやま)標高1,998m
庚申山のすぐ先に皇海山が良く見える展望地があります。ここから皇海山まで一気に縦走していきます。ここでいったん大休止をとり、鋸十一峰を目指します。

御岳山、駒掛山、渓雲山、薬師岳は標識がありました。




皇海山に吸い込まれるような天気です。

薬師岳をこえると鎖場が数か所出現します。本コースの核心部となります。皇海山はグレーディング7Dとなっており、栃木県の山では最難関の位置づけとなっています。一か所目は鎖場を下ります。足の置き場がわかりづらく一瞬ひやっとしました。疲れたときの下りの鎖場は要注意です。
グレーディング:山の難易度別にレベル分けがされています。体力度(数値)と技術力(アルファベット)で表現されています。体力は1~10の10段階で数値が増えるほど体力が必要。技術力はA~EでEに行くほど高難易度となります。皇海山は栃木県で唯一の体力度7かつ、技術度Dの最難関にグレーディングされている山です。https://www.pref.tochigi.lg.jp/d04/yama/yama.html

2か所目は横断します。こちらはすんなりと通過できましたが、天気が悪く岩が濡れている場合は注意が必要そうです。

3か所目は非常に長い鎖場です。下から上まで見えないので、降りてくる方がいないか注意が必要です。


この鎖場を越えると、鋸山までもうすぐです。


標高1,998mの鋸山に到着です。皇海山が近く、日光方面の展望も良好です!

去年縦走した日光連山がよく見えました♪

(庚申山7:30>>鋸山10:00)
皇海山(すかいさん)標高2,143m
鋸山を下り、いよいよ皇海山を目指します!

青銅の剣がみえたら、皇海山の頂上はすぐそこです!


本日メインの皇海山の山頂に到着しました!充実感マックスです。さっそくインドア派のトマトくんを組み立てて記念撮影をしました。0:00に出発して11:30なので、さすがに疲れてきたので大休止をとります。おにぎりを多めに食べて、10分ほど仮眠をとりました。目的を達成できて感動ですが、ここから帰らなければなりません。

(鋸山10:00>>皇海山11:30)
女山(六林班峠)
鋸山から皇海山はピストンなので、再び鋸山まで戻ります。鋸山からは、鋸十一峰を登り返すことも可能ですが、今回は行きと違う六林班峠を選択しました。すれ違った方に六林班峠は笹がすごいという情報をいただきましたので、今度はしっかりカッパとスパッツを装着しました。頭くらいの笹の中をかき分けながら延々と進みます。六林班峠は似たような景色が続き、ひたすら歩きます、とにかく長く長ーく感じるルートとなっています。

途中、沢があり顔を洗ってリフレッシュします。ただ似たような場所を何度も通過します。

庚申山荘・銀山平・舟石峠駐車場
やや暗くなり始めたところで庚申山荘へ到着しました。(写真を撮り忘れてしまいました。)このときすでに17:00を過ぎたあたりでした。(長い長い六林班峠からやっと抜け出せた感じです。)
ここからは下見した通り、銀山平まで一気に下っていきます。といっても、ここから一の鳥居を経て銀山平まで長い林道歩きで約2時間、さらにさらに駐車場まで30分以上を要しました。
へとへとになりながら、なんとか無事に車に到着することができました。




(皇海山11:30>>鋸山13:10>>女山14:10>>庚申山荘17:10>>銀山平18:50>>駐車場19:30)
参考
今回の登山で準備した食料の一部です。いざというときに備えて、非常食を多めに持参しました。塩羊羹とぬれ煎餅、ミソピーのピーナツハニーが小分けにできてお勧めです。このほかにおにぎりを8個と、あんぱんを一袋用意しました。

他にはYAMAPアプリをインストールしたスマホ2台と紙地図(1/25,000と1/50,000)コンパス、バッテリーとGPS時計。紙地図(1/50,000)は古かったため2022年版 山と高原地図 20 赤城・皇海・つくば 1:50,000(昭文社)を新しく購入しました。
また登山計画はYAMAPアプリと、国土交通省 国土地理院 地理院地図(電子国土Web)であらかじめ確認し、YAMAPアプリから登山計画を作成しました。作成した登山計画はYAMAPと締結している自治体はオンライン上で登山届として提出が可能です。(要件を満たしていれば紙で印刷したものを登山届として提出することも可能。)通常はYAMAPは無料バージョンを利用していますが、今回の登山に伴い1ヶ月だけYAMAPプレミアム会員にアップデートし登山保険も加入しました。YAMAPのプレミアム会員だとみまもり通知機能が利用できるので、家族へ位置情報を提供することができるようになります。
他、着替え一式とライトと電池、予備バッテリーなどを準備しました。地図はジップロックに、荷物は小分けしてビニール袋にいれておくと荷物がまとまりやすく、急な雨などからも水濡れを防げるのでおすすめです。
体調管理としては、平日に4kmのウォーキングを今年も毎日継続しました。また5km, 10km, 20kmのジョギング&サイクリングを取り入れてトレーニングを行いました。
おまけ(縦走イメージ絵) …一部、標高が間違っていたようです。

※コースタイムは参考程度としてください。天候、体調、荷物の量、人数、休憩時間など様々な要因で登山ペースは変わります。心と時間に余裕を持った安全な登山を心がけたいですね♪
山って楽しい!
登山には地図とGPS機能があり山行を記録できる”YAMAP”というスマホアプリがおすすめです。
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